あさりちゃんに出会った話
肴方面の話を始めるにあたりまずお伝えしておきたいことがある。それは私の食い意地についてだ。幼少期には親戚中に知られ、学生時代には他校にまで知れ渡り、大人になってからは抜群のエンゲル係数の高さを誇る食いしん坊、と言えばそれは私のことである。昔ほどの量は食べられなくなったとはいえ、食にかける情熱の高さにはひとかどの自信がある。
ただし味覚が繊細かというとそういうわけではなく、基本的に〝不味い〟という感覚は持ち合わせていない。何を食べてもベースは美味しい。もちろん「温かかったらもっと美味かろう」とか、「もう少し塩気があった方が好きだ」といったことは感じるし、腐っているものは不味いと断定できる。ただ、少なくとも腐っていない食材を使って作られた料理は基本的に〝美味い〟のである。飲食店等を「あそこはまずい」と評せる感覚は子どもの頃から持ち合わせていなかった。そしてそう言える友人たちをどこか羨ましくさえ感じていた。
この延長線上の話で、私には好き嫌いもない。この広い世界のどこかには口に入れただけで鳥肌が立つような食べ物があるのかもしれないが、私は未だ出会えていない。出会ってみたい。嫌いなものをおおらかに食べ残す同級生たちをいつも眩しく見つめていた。恋に恋する若手女子が悪い男に惹かれるのは、こんな感覚なのかもしれない。
つまり、私は食い道楽だが決して舌が肥えているというわけではなく、前向きな表現をするのであれば「喜びの多い舌」なのである。もうお気づきだろうか。そんな私が語る食の話は、多分に独りよがりなものなのである。そういった前提でお付き合いいただければ幸いである。
さて、本題だ。私が愛するのは外食、お取り寄せ、食材パトロールである。パトロール先は銀座交通会館あたりにひしめくアンテナショップやデパ地下、輸入食品店から商店街や中野ブロードウェイの地下一階に至るまで多岐に渡る。そんな事情のもとカルディをパトロールしていたところ、出会いがあった。「あさりちゃん」298円である。調理済みのアサリがパウチされていて、賞味期限が長く常温保存が可能。素晴らしい。絶妙にダサいパッケージにもロマンを感じる。試しに買って帰ってパスタにしてみたら、何ひとつ工夫をしなくても激ウマのボンゴレビアンコができあがった。それ以降は爆買いを続けている。
今日はそんな推しメンあさりちゃんで玄米ピラフを作ってみた。余談だが、この頃私はめっきり玄米派である。寝かせ玄米にハマったことがきっかけなのだが、なんせ寝かせるのが手間なので、最近は寝かせない玄米を食べている。
6時間ほど水に浸した玄米2合と、玉ねぎ、人参、あさりちゃんを用意する。
オリーブオイルで玄米を炒める。なんとなく米が「もうイイッス」という雰囲気になる程度が頃合いである。
味付けはコンソメとダシダを適当にミックス。〝スープとして飲んでちょうどいい味〟にすればほぼ失敗はない。
炒めた玄米とスープをお釜に入れる。
玉ねぎをバターでゆっくり炒めて、火が通ったらあさりちゃんを投入。
そのままご飯の上に乗せて、刻んだニンジンも乗っける。そして、炊く。
炊けた。柔らかご飯が好きなものでつい水を入れすぎるクセがあるのだが、案の定スープが多めでピラフというよりリゾット風に仕上がった。いずれにせよ美味い。あさりちゃんはどこでもいい仕事をする。もっともっとあさりちゃんの可能性を広げてあげたい、広い世界を見せてあげたい、そう思うのである。
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